7. パーキンソン病 症状にはどのような治療法がありますか
治療の基本は薬物療法です。大きく分けて7グループの薬が使われます。それぞれには特徴があり、必要に応じて組み合わせて服薬する必要があります。どの薬も病気を根本的に治療する「原因治療薬」ではありません。不足しているドパミンを補うことで症状を緩和する「補充療法薬」です。したがって薬を服薬しているときは症状が良くなりますが、服薬を止めれば症状は元に戻ります。もう一つの治療法として手術療法がありますが、これも対症療法であり根本治療ではありません。以下に7グループの薬を解説します。
(1) L-dopa(レボドパ)
最も強力なパーキンソン病治療薬です。1970年代のこの薬の登場はパーキンソン病の治療に画期的な進歩をもたらしました。それまで発症後5年で寝たきりだったのが、 10年経っても歩けるようになりました。ところがL-dopaの服薬期間が長くなると、さまざまな問題が起こります。最大の問題は薬効の変動です。L-dopaは作用時間が短いため、内服すると急に動けるようになりますが、2時間もすると効果が切れて急に動けなくなります。効果が切れるのを恐れてL-dopaを過剰に服薬すると、今度は身体が勝手に動く若年性アルツハイマーL-dopa誘発性の不随意運動(ジスキネジア)が出現します。1980年以降わが国では末梢性ドーパ脱炭酸酵素阻害薬との合剤が一般的です。
(2)ドパミンアゴニスト
L-dopaの副作用を克服するために開発されたのが、作用時間の長いドパミン受容体刺激薬(アゴニスト)です。我が国では現在6種類のドパミンアゴニストが使用可能です。ドパミンアゴニストは長くのみ続けても薬効の変動が生じにくいことがわかっています。しかしL-dopaより効くのに時間がかかり、また吐き気や幻覚・妄想などの副作用が出やすいという問題があります。薬効の変動の起きやすい若年の症例は、なるべくドパミンアゴニストで治療を開始した方が良いでしょう。いずれL-dopaが必要になる日が来るのですが、今後の長い人生を考えるとL-dopaの服薬開始を少しでも遅らせて、薬効の変動を先送りしたいからです。一方高齢の症例は最初からL-dopaで治療開始して良いでしょう。効果は確実ですし、高齢者は薬効の変動やジスキネジアが起きにくいと言われています。さて、6種類のドパミンアゴニストはそれぞれ特徴があるので使い分けが必要です。ペルマックスやカバサールで心臓弁膜症や肺線維症が起きたという報告があります。そこで服薬するときは心エコー検査等で定期的に心臓の弁をチェックすることになっています。一方ビ・シフロールやレキップでは運転中に突然入眠して事故を起こす「突発的睡眠」が起こることがあるため、服薬中は運転しないよう警告が出されています。
(3)抗コリン薬
パーキンソン病 治療薬として最初に使われた薬です。アルツハイマー 症状ではドパミンの減少に伴って、もうひとつの神経伝達物質であるアセチルコリンが相対的に過剰になります。それを減らす目的で使われます。効果は弱いのですが、振戦に対して有効なことがあります。認知症の原因となるアルツハイマー病では、最初に脳内のアセチルコリンが減少します。したがって高齢者が抗コリン薬をのむと、物忘れや幻覚・妄想などアルツハイマー病に似た症状が出ることがあるので注意が必要です。
(4)塩酸アマンタジン
塩酸アマンタジンは元々抗ウイルス薬として開発され、A型インフルエンザの治療薬としても使われています。線条体でのドパミン放出を促す働きがあるほか、ジスキネジアを抑制する効果が知られています。ただし全ての患者さんに有効なわけではなく、また副作用として幻覚や妄想が出やすいので注意が必要です。
(5)ドロキシドパ
長期経過したパーキンソン病で問題になる症状のひとつに、「足のすくみ」があります。これにはもう一つの神経伝達物質であるノルエピネフリンが関与しています。ノルエピネフリンはβ水酸化酵素によってドパミンから合成されるため、ドパミンが減るとやがて不足します。前駆体であるドロキシドパはそれを補うために使われます。足のすくみ、意欲低下、立ちくらみを改善する効果が知られています。
(6)MAO-B阻害薬
MAO-B阻害薬はMAOの活性を低下させてドパミンの分解を抑制します。これによりL-dopaの効果は延長しますが、ジスキネジアは悪化することがあります。ノルエピネフリンなど他の神経伝達物資の分解も抑制するので、意欲が出て気分が明るくなる傾向があります。その一方で、幻覚・妄想や夜間不眠などに注意が必要です。
(7)末梢性COMT阻害薬
吸収されたL-dopaは血液に入り、血液脳関門を通って脳に入ります。血液の中にはドーパ脱炭酸酵素やCOMTという酵素があり、L-dopaを分解します。現在使われているL-dopa製剤の多くは、L-dopaと末梢性ドーパ脱炭酸酵素阻害薬の合剤です。このため、L-dopaはCOMTによって分解されます。末梢性COMT阻害薬はそれを防いでL-dopaが脳内にたくさん入るようにするお薬です。効果が短いのでL-dopa製剤と同時に服薬する必要があります。